年金減額取り消し請求裁判:陳述要旨                              平成30年7月30日 原 告 伊藤良孝ほか415名 被 告  国 陳 述 要 旨 (準備書面14) 名古屋地方裁判所民事係あて                      原告ら訴訟代理人弁護士新山直行外11名 第1 はじめに・・・以下〔酒井先生陳述〕 原告らは、これまでに国などが調査した統計資料や原告らに対して実施したアンケート調査をもとに、原告らの生活が逼迫しているという実態を明らかにしてきました。     例えば、先のアンケート調査によれば、@貯蓄額が100万円未満の世帯が10%、500万円未満の世帯が30%であり,貯蓄がなければまともな老後を暮らせない現社会において、原告らは貯金がなくなるのが先か、命がなくなるのが先かという渦中にあること、A食費や水光熱費など生活に不可欠な支出や、社会保険料や医療費など高齢者にとって命綱である医療・介護に関する支出が原告らにとって大きな負担となっていることが明らかになっています。こうした年金生活者の生活実態は、今回裁判に提出した陳述書において、原告らの生の声としても語られています。 第2陳述書で語られている原告らの生の声 1 介護・医療費等社会保障費や医療費の負担増   介護・医療費など社会保障費や医療費の負担が大きくなっていることを多くの原告が陳述書のなかで訴えています。 @ いくつもの病気を持っており、検査や毎月飲む薬代で毎月お金がかかる。 A すでに医療費がかかっているのに、これ以上病気が発生し、さらに年金の引き下げが続くと病気の治療もできなくなると思う。 B 年金が削減されているのに、社会保障制度は次々と改悪され、医療や介護の自己負担増が増えている。 などと不安を訴える原告らが多くいます。 2 食品や日用品などの高騰   年金受給者の多くが食費などを節約してつつましく生活しているなか、いわゆる安倍のミックスと称される株高円安政策により、生活必需品や公共料金などの価格が高騰してきました。このような物価上昇は、原告ら年金生活者の生活を直撃しています。 @ 今はたくさん我慢する事で生活が成り立っている。今でもぎりぎりの生活なのに、これからも年金の引き下げがあると不安だ。 A 洋服は、下着以外新調しておらず、手持ちの洋服を着倒すまで着ている。 B 最近は野菜など生鮮食品が値上げされ、毎月赤字財政であるというような原告の不安が訴えられています。 3 電化製品や家の修繕費の負担  年金生活者には経済的余裕がないため、故障した電化製品の買い替えや家の修繕などで一時的な支出が必要となっていても、それを工面することが困難であるということを訴える原告も多くいます。 @ 築45年以上たち、いたるところに不備が出てきて修理が必要になっているが、家計が厳しい子供からの援助も期待できず悪くなったままである。年金だけで修理代の工面ができない。 A 持ち家は家賃がかからないが保守や修繕に費用がかかることを痛感している。 B 風呂が壊れ、修理代に40万円かかった。洗濯機やエヤコンが壊れ貯金を切り崩して購入している ということを述べる原告もいます。 4 文化的な生活ができない  友人知人との交際や冠婚葬祭は、健康で文化的な人間らしい生活を送る上では欠かせませんが、年金が少ないが故にこのような支出も抑えて生活しなければならないという訴えも見受けられます。 @ マンションと同じ階の人とは日頃から親しくしているが、お互いに出金を必要とすることからと結婚や葬式が連絡なく行われた。人生の大切なことに喜びあい、悲しみ励ましあうことさえも自制しなければならないことは悲しい。 A 夫婦そろっての旅行も考えていたが、いまだに実現していない B 生活の楽しみはなくなり、幸福の追求もできず、人助けもできず、墓参りにもいけない。情報も立たれ、社会との交流もなく、心をとざし生きる屍となってしまう という原告らの悲痛な思いが見受けられます。 5 預貯金の切り崩しで生活が不安   先に述べたように、預貯金の額が100万円未満の世帯が約10%、500万円未満の世帯が30%おり、預貯金を切り崩しながらの生活に多くの原告が不安を訴えています。 @ どんなにつつましく生活しても限界があり、貯金を壊しながらの生活に将来不安である A 老後のためと在職中にためた預貯金も残り少なくなってきて、築40年を超えた自宅家屋の修繕や耐震工事に手がだせない ということを述べる原告もいます。 6施設に入居するための費用がない  年金生活者が自分で生活できなくなったときに施設に入居できるだけの年金収入や蓄えがないことを訴える声も多くあります。  施設を見学しているが、前金で数百万円とか1千万、個室で毎月20万円、相部屋でも最低15万円、今の年金では無理である という原告の声もあります。 7 子供えの援助が必要  年金生活者の家族も皆が自立できているわけではなく、家族のためにわずかな年金収入から援助している原告もおり、年金引き下げは原告ら家族を含めた死活問題です。 @ 子供がいるが若者の貧困が言われるようにまだまだ援助が必要な状態である A 青年は劣悪な環境にあり、給料は安く、生活に必要な支払いだけで文化的なお金と時間がないため、援助している という原告もいます。 8 配偶者の一方に万一があると生活が成り立たない   夫婦二人の年金ならば生活がなんとか生活できるが、どちらかに万一のことがあると生活が立ち行かなくなるという不安を述べる原告がとても多くいます。 @ 認知症の恐怖にかられる毎日で、どちらか一方でもそうなれば施設に入ろうとそうだんしているが2人が入るお金はない A 夫は国民年金であり夫がなくなっても遺族年金は貰えず、夫の国民年金がなくなれば生活していけなくなるのは間違いない という不安を述べる原告もいます。 第3 まとめ   原告らの声は、年金の額が引き下げられたにもかかわらず、実支出は減少していないばかりか、社会的固定費や社会保険の負担の増加といった年金受給者の生活実態が明らかになりました。ここで触れた原告らの声はごく一部ですが、提出した陳述書に述べられた原告らの実態を踏まえれば、その状況下でさらに年金を減額することは決して許されるべきではなく、憲法25条、29条に反するものです。 (準備書面15) 最低保障年金の確立の必要性を陳述:最低生活保障の法律を作る必要性を陳述   生活保護・国民年金・厚生年金・障害者年金など・それぞれ分断され年金額は、まちまちの額であるものを、最低生活保障額を決め、統一的に決める法律を作るよう陳述したものです。 また、憲法25条・29条にいう最低限度の生活をいとなみ文化的な生活ができることを保障する具体的法律を、これまでの立法事実や国連の社会権規約に照らしても、これまで放置した無責任な国は、愚直にして急ぎ立法に踏み切るべきと陳述したものです。