5年ごとの年金財政検証(1019年8月28日) (中日新聞社説:抜粋))        年金制度の将来            年金で安心の底上げを図れ ****将来の公的年金の財政見通しを示す検証結果は、年金額の目減りを改めて示した。少子高齢化を乗り越える知恵を集め、安心の底上げを図りたい。(図るべきだ)**** 5年ごとに実施される財政検証は健康診断にたとえられる。今回の検証結果は政府に言わせると「とりあえず大丈夫」というが(・・本当だろうか)。 だが、それは年金額の目減りと引き換えに制度を維持できるという見通しだ。 (そのため安心の底上げを図る将来の年金制度を、すなわち給付を増やす改善策をただちに議論し、その方策を国民示すこと急を要する。) 続く受給額の目減り 年金制度は、現役男性の平均手取り収入の5割を給付額として最低保証することを国民と約束している。・・・それが100年先まで可能かを見通すのが財政検証だ。(そのやり方は、)経済成長が進むケースから進まないケースまでの6通りで試算した。 まず、5年後の次の検証時には6割程度を保証できると試算した。そのうえで経済成長が進む3ケースでは将来にわたり将来にわたり制度を維持できる結果となった。 制度は現役世代の賃金が財源となるため経済動向の影響を受けるが、将来それがどうなるか(は)分からないのも事実だ。・・・実際、5年前の前回検証で想定した前提と比べると、物価や賃金は伸び悩んだ。一方、高齢者など働く人は想定より増えて制度の支えては増えた。・・・あくまで検証結果は将来を考える目安(にすぎない)と理解したい。 問題は別にある。 制度を維持する仕組みだ。 政府は、2004年の制度改正で考えを大きく変えてしまっている。それまでは必要な年金額を賄うために現役世代が支払う保険料を決めていた。それでは増える高齢者の年金を支える現役世代の負担が大きくなるため、保険料に上限を設け、そこから得られる財源の枠内で給付を賄うことにした。そのため年金を受け取っている高齢者の給付を、物価や賃金の伸びより押さえる仕組みが導入されている。(いつまでも年金は目減りして、年金は減り続ける。) 給付を増やす改善策 今回の検証でも、今後30年近く給付抑制を続けないと、制度を持続できない結果となった。しかも想定どおりに抑制できての試算だ。 また、政府が約束する最低補償額自体も十分な額かどうかは議論がある。抑制の仕組みは将来世代の年金財源額を確保するためには致し方ないが(致し方ないとしても)、受給者の生活はとても[100年安心]とは言いがたい。 政府は、制度の健全性だけをいうのではなく、制度が抱える課題も丁寧に説明すべきだ。課題解決への努力なくして制度の不安はなくならない。 その課題とは、年金額を今後どう増やしていくかだ。検証では将来の年金水準を底上げする改善策も試算した。 現在20〜60歳まで40年間となっている基礎年金(国民年金)加入期間の45年への延長、働くと年金が減る在職老齢年金制度の見直し、厚生年金加入年齢の70歳以上へのへの引き上げ、厚生年金の加入対象の拡大などです。 いずれも将来の年金水準の引き上げ効果がある。制度改正を求める。とくに厚生年金の対象拡大は非正規で働く人の無年金・低年金対策になる。大胆に進めるべきだ。職場の厚生年金に加入できない非正規の人は自から国民年金に入るしかないが、年金額は不十分だ。厚生年金に加入できれば保険料負担は減るし年金額は増える。 そのため政府は加入要件の緩和を順次進めている。だが、16年の緩和で対象となった人は約40万人程度であった。今回の検証では1050万人に広げると一定の年金水準引き上げ効果があると示された。 対象拡大には保険料負担が増える企業の理解が不可欠だ。加入できる職場は人材確保につながるなど、企業側の利点も含め政府はその必要性を練り強く説くべきだ。 ただ、これらの改善策は将来年金を受け取る世代が対称だ。今受給している高齢者の生活をどう支えるかも忘れてはならない。高齢化は長寿化も同時に進む。老後が長くなり年金受給期間は延びている。加えて現役世代の減少である。年金だけで長い老後を支える事は無理があるだろう。 支援に複眼の知恵を やはり高齢でも働きたい人が働ける環境の整備は欠かせない。企業には高齢者が能力を発揮できる職場つくりに知恵を絞ってもらいたい。政府の後押しも当然だ。働けない人への支援対策も考えねばならない。低年金の人には10%に引き上げる消費税の財源を使い、10月から最大月5000円を給付する制度が始まる。その拡充も検討に値するのではないか。安価な住宅供給や住宅手当の給付など支援策は複眼で考えたい。 人口減少社会では、負担増や給付減など国民に痛みが伴う社会保障制度の改革は、避けて通れない。 政府は、負担を分かち合う社会の将来像を示す責任がある。